日本全国に80,000社以上もあると言われる神社。日本一神社の数が多い都道府県は「新潟県」ですが、逆に『少ない』都道府県はご存知ですか?
実は、神社の数が少ない都道府県のトップ3は沖縄県、和歌山県、宮崎県。沖縄県の神社の数はわずか15社しかなく、江戸時代まで沖縄県が本土とは全く異なる文化環境にあったことを考えれば当然の理由と言えるでしょう。
では、その他の2位以降の都道府県はどうでしょうか。
本記事では【神社の数が少ない都道府県トップ3とその理由】について調べてみました。
第1位 沖縄県
令和4年度版の文化庁文化部宗務課「宗教年鑑」によると、沖縄県の神社の数はわずか15社です。沖縄県には、琉球王国時代、アメリカ統治時代など独自の歴史があるため、神社の歴史もまた本土とは少し異なります。
沖縄県の神社の歴史
沖縄の最初の神社は1500年ごろに建立されたと言われています。琉球王国時代に創建され王府の保護を受けたと言われている8つの神社は「琉球八社」と呼ばれていました。社殿なども整えられており、本土と同じように神仏習合も受け入れられていたようです。
また、1609年に薩摩が琉球へ侵攻した時、「掟十五条」という起請文によって宗教活動も制限されました。これはお寺の建立を制限するものでしたが、神仏習合であった琉球においては神社も同様に制限されていたと考えられます。
明治時代に入って廃藩置県により琉球は沖縄県になり、急速に日本化が進められたのだそう。大正から昭和にかけて、新しい神社の建設も進められました。その一つが「県社」である「沖縄神社」です。また護国神社や宮古島の宮古神社も同じ時期に建立されています。一方で琉球八社のうち波上宮を除く七社に対する公的な資金援助が打ち切られました。荒廃した社殿は戦災などで消失し、戦後の境内地にはアメリカの教会や公民館が建てられたため、元の神社に戻ることはありませんでした。
沖縄県における神道とは
以上の歴史背景から、沖縄には社殿を持つような神社は少ないですが、神道はしっかりと根付いていると思われます。何故なら沖縄には「御嶽(うたき)」があるからです。御嶽とは「祈りを捧げるための神が存在する聖域」のことで、社殿のような建物ではなく木々が生い茂っていたり、岩場になっていたりします。御嶽は地域ごとに存在し、祭祀を行うときにはこの御嶽で行われていたそうです。
沖縄には沖縄の神道が息づいているのですね!
第2位 和歌山県
和歌山県の神社の数は令和4年度版「宗教年鑑」では449社です。隣接する奈良県の1388社という数と比べてもとても少ないことが分かります。
その理由として明確なことはわかっていませんが、一説には「熊野三山があるから」ではないかとされています。それはこの後に挙げる第3位が宮崎県であることにも裏づけられますが、「大きな神社がある県は神社の総数が少ない傾向になる」ということです。
和歌山県における神道とは
和歌山県、特に熊野地方は古くから強い信仰に支えられてきました。熊野本宮大社に神様が降臨したのは約2000年前を言われています。平安時代から鎌倉時代にかけては盛んに熊野詣が行われており、「伊勢へ七度、熊野へ三度」という言葉があるほどです。
和歌山県の地形としては本州中央部から太平洋に向けて突き出た形の半島で、熊野地域はその南部ですが大半が山岳地帯です。熊野詣は険しく厳しい旅であり、熊野三山へのお詣り自体が修行でした。
しかし、その苦行を乗り越えても熊野へお詣りしたい、という熱い信仰を集めた理由があります。それは「熊野権現」が神仏習合であること、身分や男女の区別をせず受け入れたことだと言われています。
かつて念仏信仰を広めた一遍上人が参詣した時、熊野権現から『信不信を選ばず、浄不浄を嫌わず、無心で布教するのだ』というご神託を受けたと言われています。そのような懐の深さが長い歴史を経てもなお人々を引き付けるのかもしれません。
そしてこのような熱い信仰に支えられた神社が近くにある地域の人々には、他の神様を祀る必要性はあまり感じられないのではないでしょうか。それゆえに和歌山県は神社の数が少ないのだと考えられます。
熊野三山へお詣りする道は熊野古道と呼ばれ、自然豊かで絶景ポイントもたくさんあります!
第3位 宮崎県
第3位の宮崎県の神社の数は令和4年度版「宗教年鑑」では674社です。九州地方で唯一1000社を切る圧倒的な少なさです。
しかし、宮城県には天孫降臨の聖地、約1900年の歴史を持つ高千穂神社をはじめとして、神話に出てくる神様たちが祀られている由緒ある神社が多くあります。天照大神、イザナギノミコト、ニニギノミコト、桓武天皇など壮々たる顔ぶれで、まさに日本の神話の源流とも言えるでしょう。
宮崎県における神道とは
宮崎県は、縄文時代より自然崇拝と先祖崇拝の「原始神道」が根付いている県です。そのため神式でお葬式を行う家が多い県でもあります。さらに明治時代におこった「神仏分離」と「廃仏毀釈」の影響で、お寺が少なく神様とのつながりがより一層色濃く維持されていると言えます。
神道のお葬式、神葬祭は「死」を日常から切り離すべき「穢れ」と捉えているので、原則として聖域である神社で行うことはありません。自宅で行うことが一般的で、これも神社の数が少ない理由の一つかもしれません。
神社の数は少なくても、それぞれの神社の立派な社殿は、宮崎県の人々がいかに神話を大切にして語り継いできたかをよく表しています。
神話の神様に会いに行くならやっぱり宮崎県ですね!
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まとめ
本記事では【神社の数が少ない都道府県トップ3とその理由】について調べてみましたがいかがでしたでしょうか。
神社の数が少なくても、どの県も神社や神道に対する熱い信仰を感じられましたね。
それぞれの土地には数の多少にかかわらず、神道の捉え方、神社に対するさまざまな思いがあります。沖縄県も和歌山県も宮崎県も、長い歴史の中で人々の暮らしと神道が密接に結びついてきました。
観光で神社巡りをする際に、その土地の歴史や神社との結びつきを調べてみるのも面白そうですね。
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