神社といえば神様を祀る場所。神話で語られている神様や、木や石といった自然に宿る神様が祀られている神社が多いですが、実在した人物が神様になる場合もあります。そのような神様を人神または人物神と言います。
本記事では【神様になった歴史上の人物とその人神を祀っている神社】をご紹介します。
歴史上の偉人達がどのようにして神様になったのか、どこに祀られているのか、歴史を知るひとつの視点として面白いのではないでしょうか。
どうして人が神様になるの?
実在している人間が神様として祀られるようになるのはどうしてでしょうか。それには大きく分けて二つの理由があります。
- 生前の多大な業績に対しての尊敬
- 恨みや祟りに対しての鎮魂
他の人ではできないような偉業を成し遂げた人物や非業の最後を迎えた人物に対して尊敬や畏れ、憐れみの思いが大きいと、その人物は神になるということですね。
偉大な人や不遇な人への、信仰に似た強い気持ちの表れですね!
平安時代の偉人達
菅原道真
日本全国に10,000社以上あると言われている「天満宮」。「天神さま」や「天神社」と呼ばれるこれらの神社の神様が菅原道真です。
無実の罪で太宰府へと流された菅原道真。彼が亡くなった後、京都で不幸な出来事が続出したと言われています。「菅原道真公の祟りでは?」と畏れられていた折に宮中(天皇の住む場所)に落雷があり、その後醍醐天皇が亡くなったことから菅原道真を「天神」として祀るようになりました。
しかし、とても学問に優れていたことから、怨霊として祀られつつも、学問の神様として全国に広がったのです。
菅原道真を祀る主な神社 | ・太宰府天満宮 ・北野天満宮 |
安倍晴明
陰陽師の代名詞と言えるくらいに、安倍晴明は日本で一番有名な陰陽師です。平安時代からその人気は高かったようで、さまざまな作品に登場しています。
占いを行い京都を守ることに大きな業績を残した安倍晴明が、85歳という当時としては驚異的な長寿を全うした際、一条天皇の命によりその偉業を讃える晴明神社が設けられたそうです。
安倍晴明を祀る主な神社 | ・晴明神社 ・安倍晴明神社 ・立石熊野神社 |
平将門
平将門といえば武士が勢力を増していく時代のトレンドヒーローとして、圧倒的な強さや激しい性格が印象的な人物です。討死した後、平安京で晒された首が胴体を求めて東に飛んだという伝承も有名ですね。
そして、平将門は「日本三大怨霊」と言われるほど“数々の祟り”も伝えられています。その祟りを鎮めるために将門の首だけでなく、腕や足、兜や鎧を祀る神社やお寺が各地に広がってます。
平将門を祀る主な神社 | ・神田神社 ・国王神社 ・駒形大神社 ・築土神社 ・御首神社 ・鎧神社 |
「日本三大怨霊」は菅原道真、平将門、崇徳天皇の3人です。
3人とも神様になって鎮魂のために祀られていますね!
戦国時代の偉人達
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康
戦国の三英傑として誰もが知るこの3人も神様になっています。
3人ともそれぞれの業績を讃えるために神社は設けられていますが、3人の中で一番先に神様になった(朝廷から神号を与えられた)のは秀吉でした。秀吉は遺言で「自分を”新”八幡神として祀るように」と言い残したそうですが、実際は「豊国大明神」という神号で祀られています。
その後、天下を統一した徳川家康の意向により、一時は豊国神社は廃絶、豊国大明神の神号も剥奪されましたが、明治天皇の勅命によって再興されました。
同じタイミングで織田信長も明治天皇の勅命により「建勲神」として祀られるようになりました。
徳川家康は、遺言により駿河久能山に葬られましたが、翌年下野日光山へと移されて「東照大権現」として祀られ、神様になりました。この時家康の神号が「権現」となったのは、一説によると秀吉が「大明神」だったためだと言われています。
織田信長を祀る主な神社 | ・建勲神社 |
豊臣秀吉を祀る主な神社 | ・豊国神社 |
徳川家康を祀る主な神社 | ・日光東照宮 ・久能山東照宮 |
神様になる時でさえ秀吉と家康には因縁があるのですね。
江戸時代以降の偉人達
二宮尊徳
昭和の時代に小学生だった方には「二宮金次郎」の像はとても馴染み深いのではないでしょうか。勤勉で努力家、大人になってからは多くの農民を飢饉から救った功績が讃えられ、神様として祀られています。
二宮尊徳を祀る主な神社 | ・報徳二宮神社 |
西郷隆盛
西郷隆盛は激動の時代の日本で大きな功績を残しています。長州征伐や薩長同盟では中心人物として活躍し、江戸城の無血開城は日本の時代の大きな転換点となりました。そのような輝かしい偉業を成して一時は新政府に参加していた隆盛ですが、薩摩士族に促されて挙兵し、新政府と戦い敗北して自決しました。西郷隆盛が神様になった経緯には、その功績の大きさを讃えるためと、悲しい死を迎えた隆盛への同情の気持ちの両方があるようです。
西郷隆盛の遺訓は全部で41あるのですが、それを守ろうとする地元の人々の主導で神格化され神社が建立されたことは注目すべきところです。
西郷隆盛を祀る主な神社 | ・南洲神社 |
乃木希典
明治時代の軍人である乃木希典は、清廉潔白は人物として知られています。陸軍大将、軍事参議官、学習院院長を務め、軍人として、教育者として貢献しました。
明治天皇の大葬の日に夫人とともに殉死しました。
乃木希典を祀る主な神社 | ・乃木神社 |
戦国時代以降の偉人は功績を讃えるために祀られている方が多いですね!
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まとめ
本記事では【神様になった歴史上の人物とその人神を祀っている神社】をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
神道の考え方は日本独特なもので、神話の神様から自然の中の細部に至るまで八百万の神が存在すると考えられています。そして実在した人物も神になる、つまりその人物に対する人々の想いが「神」を作り上げると言えます。
今回ご紹介した他にも多くの「人物神」が日本各地に祀られています。学校で習う歴史とは少し違う視点で日本史を見るのも面白いですね。
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