みなさんは天狗にどんなイメージを持っていますか?
昔は人が行方不明になると天狗のしわざと言われ、悪い妖怪と思っている人もいるかもしれません。
しかし、なかには神社仏閣に神として祀られたり、伝説を残したりする天狗もいます。
そこで今回は【天狗に関連する日本全国の神社仏閣5選】をご紹介します。
神社仏閣だけでなく、妖怪にも興味がある人はぜひ本記事をご覧ください。
【はじめに】天狗はどんな存在?
天狗という言葉は中国生まれで、もともとは災いをもたらす流れ星を意味していました。
隕石が落ちる時の音が犬の声に似ていることから、天狗と名付けられます。
天狗が日本に伝わったのは7世紀。
637年9月に大きな音を立てて都の空を飛ぶ星を、留学経験のある僧が「これは流れ星ではなく、天狗だ」と語った記録が日本書紀に残っています。
中国での天狗は犬でしたが、日本書紀では天狗と書いて
「あまつきつね」と読みました。
平安時代中期になると天狗は狐の妖怪とされ、その後は鳥の姿をした妖怪に変化していきます。
時代が進むにつれて、さまざまな種類の天狗が登場します。
- カラス天狗…修行者である山伏と、神通力を持った空を飛ぶ天狗が交わって誕生。
- 鼻高天狗…全国的に広まったのは江戸時代以降、その名の通り鼻が長いのが特徴。
のちに天狗は神格化されるようになり、現在は山の神や魔除け、防火のご利益を授ける神様として信仰されています。
天狗にまつわる神社仏閣5選
天狗に関連する神社仏閣をご紹介します。
鞍馬寺(京都府)
鞍馬寺は770年に建てられ、鑑真の弟子が毘沙門天を祀ったお寺です。
鞍馬山は古くから山岳信仰が盛んだったため、鞍馬山に住む大天狗:僧正坊は、最高の地位にある天狗だと考えられています。
また、この鞍馬寺で源義経は仏教を学び、夜は天狗に兵法を習ったという伝説が語られてきました。
そのため、境内には下記のような天狗に関する場所が存在します。
- 鬼一法眼社…義経に兵法を授けた天狗を祀る
- 僧正ガ谷不動堂…鞍馬天狗と義経が出会ったとされる
鞍馬寺にはケーブルカーでも参拝可能です。
せっかく鞍馬寺に来たなら清少納言が「近うて遠きもの、鞍馬の九十九折といふ道」と書いた参道を通りましょう。
歴史を感じながら参拝を楽しめますよ。
高尾山薬王院(東京都)
高尾山薬王院は川崎大師・成田山新勝寺と並ぶ、真言宗の関東三大本山のひとつ。
正式名称は高尾山薬王院有喜寺です。
高尾山薬王院や高尾山と呼ばれています。
本尊は薬師如来ですが、南北朝時代に飯縄権現を守護神として祀るようになってから、高尾山では飯縄権現と共に天狗も信仰されるようになりました。
高尾山の天狗は飯縄権現の使いであり、除災開運・招福万来などのご利益を人々に授けています。
修験道の道場であった高尾山は、毎年6月と10月に山伏の修行を体験できる「信徒峰中修行会」が開かれます。
その他にも、滝での水行体験や、火の上を渡って災いを祓う火渡りも体験可能です。
高尾山薬王院ではさまざまな場所で天狗の姿が見られます。
たとえば、本堂にある大天狗と小天狗のお面や、山門のそばにある天狗像など…。
さらに、御朱印にも天狗がデザインされており、天狗の存在を感じられるお寺です。
迦葉山弥勒寺(群馬県)
迦葉山龍華院弥勒護国禅寺こと迦葉山は、巨大な天狗のお面「日本一の天狗」と「交通安全身代わり天狗」で有名なお寺です。
迦葉山では、天狗にまつわる伝説があります。
このお寺は、もとは天台宗を信仰していましたが、1456年に天巺禅師により曹洞宗へ改宗しました。
その天巺禅師の弟子に中峰尊という僧侶がいましたが、中峰尊は天巺禅師が住職を辞めると、自分の正体を明かします。
「私は迦葉の化身だ、今後は末永く寺を守ろう」と言って中峰尊は天狗に変身し、天狗面を残して昇天しました。
このようにして、迦葉山の天狗信仰が始まりました。
迦葉山への参拝は他のお寺に比べて特徴的です。
帰宅する際にお面を借り、願いが叶うと新しいお面と共に奉納する習慣があります。
古峯神社(栃木県)
古峯神社は約1300年前に、京都からやって来た藤原隼人が日本武尊を祀ったことにより始まりました。
古峯神社は「天狗の社」とも呼ばれており、日本武尊の使いである天狗が、崇拝する人々を災難から守ってくれると言われています。
神社の廊下や参籠室(宿泊所)にある天狗の面や天狗の人形、下駄などは、熱心に崇拝する人たちが願いが叶った印として納めたものです。
古峯神社では参拝者が心を静めてお参りできるように、「天狗の宿」と呼ばれる宿泊施設が用意してあります。
古峯神社が気になる人は、ぜひ宿泊もしてみてくださいね。
大杉神社(茨城県)
大杉神社は豪華な外観から「茨城の日光東照宮」と言われる神社です。
大杉神社では祭神の使いとして天狗が信仰されており、下記のような言い伝えが残っています。
鎌倉時代、常陸坊海尊という僧侶が大杉神社に仕えていました。
海尊は大杉大明神の力で数多くの奇跡を起こし、やがて「海尊は天狗で、大杉大明神の使いなのだ」との噂が立ちます。
海尊は背が高く紫色の髪を生やし、青い目で鼻が高い人物でした。
「鼻が高くて体が大きい」という特徴が天狗と似ていますね。
どんな願い事でも叶えてくれる海尊にちなんで、大杉神社は「夢むすび神社」を名乗るようになりました。
以前、大杉神社はカラス天狗のみを祀っていました。
現在では「かない天狗」のカラス天狗と「ねがい天狗」の鼻高天狗の両方を祀っています。
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まとめ
【天狗に関連する日本全国の神社仏閣5選】をご紹介しました。
「遠野物語」で有名な民俗学者の柳田邦男は「信仰を失い、落ちぶれた昔の神が妖怪である」と言いました。
しかし、天狗は妖怪から神へと変化した珍しい存在です。
いたずら者の妖怪でもあり、信仰する人を災いから守ってくれる神様。
そんな天狗からパワーをもらうために、今回ご紹介した神社仏閣にお参りしてみてはいかがでしょうか。
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